銀行系カードローンでも過払い金請求はできる?

執筆者の情報
名前:馬沢結愛(30歳)
職歴:平成18年4月より信用金庫勤務

過払い金とは

少し前までは、テレビを見ていると、頻繁に法律事務所のCMで過払い金のことが多くありました。

また、最近では「過払い金請求には期限があります」というように、過払い金という言葉を知らない人はいないと言っていいほど浸透しています。

しかし、過払い金という言葉だけを知っていて、実際にはどのような借入があると過払い金請求できるのかということまでは知らないという人は意外と多いです。

その一つとして、銀行が提供している銀行系のカードローンです。

この記事では、この銀行系カードローンも、過払い金請求ができるのかということについて紹介していきますが、まずは過払い金とはどのようなものなのかということを簡単に説明します。

過払い金とは、返済しすぎていたものを請求することをいい、残っている借金に充てて無くし、それでも払い過ぎている分があれば、お金が戻ってきます。

よくCMで「借金が無くなり、30万円も戻ってきました」というのは、このためです。

過払い金はグレーゾーンが関係している

過払い金は、借金を契約当初に遡り、金利を利息制限法の上限に引き直して再計算することで払い過ぎていた分があるかを計算します。

ここで大事なのが「グレーゾーン」であり、過払い金はグレーゾーンで借金をしていた人でなければ発生することはありません。

グレーゾーンとは、上限金利の異なる利息制限法と出資法との間の金利のことです。

利息制限法では、借入金額に応じて15%~20%を上限金利としていましたが、出資法では29.2%を上限としていました。

つまり、貸付を行う業者が、25%で融資を行ったとしても、利息制限法では違法だが、出資法では法律の範囲内ということで、罪に問われることがありませんでした。

グレーゾーンは2010年に撤廃された

完全な違法ではないグレーゾーンですが、あまりにも高い金利を適用していると、返済できなくなる人が多くなってしまいます。

これにより、多重債務者となる人も多くいましたので、2010年の貸金業法改正によってグレーゾーンは撤廃されました。

先ほどもお話ししましたが、過払い金はグレーゾーン金利で借りていなければ発生しませんので、貸金業法改正以降に借りた人は過払い金請求をすることができません。

貸金業者はグレーゾーンが普通だった

過払い金請求というと、消費者金融やクレジット会社が思い浮かぶ人が多いです。

それもそのはずで、消費者金融やクレジット会社では、貸金業法が改正されるまでは20%を超えるグレーゾーンでの貸付が普通でした。

しかし、グレーゾーンが撤廃され、過払い金請求が始まると、非常に多くの返還が出てしまい、経営困難に陥ってしまう貸金業者が多発しました。

大手消費者金融も例外ではなく、事業を回復させるためにアコムやプロミスは銀行の子会社となり、アイフルは事業再生ADRを申請しました。

貸金業者の一般的な貸付利率

グレーゾーンが撤廃以降、利息制限法の上限金利の範囲内で金利を設定しなければなりません。

では、これまでグレーゾーンで貸付していた貸金業者が、現在ではそのような金利を適用しているのでしょうか。

それを紹介する前に、まずは利息制限法で定められている金額別の上限金利を紹介します。

  • 10万円未満・・・20%
  • 10万円以上100万円未満・・・18%
  • 100万円以上・・・15%

カードローンの場合、利用限度額がいくらで設定されているかによって上限金利が決まります。

現在の貸金業者が適用している一般的な金利は、利息制限法の上限金利をそのまま適用していますので、金額によって18%や20%という金利となっています。

しかし、最近のカードローンは300高額な貸付にも対応しており、消費者金融でも3%程度の低金利で借りることができるようになっています。

銀行はグレーゾーンで貸付していない

消費者金融などの貸金業者では、グレーゾーン金利での貸付が普通であり、いまでこそ低金利として有名な銀行も、昔は金利が高いと言われていました。

しかし、銀行はグレーゾーンではなく、さいしょから利息制限法の範囲内で貸付を行っていました。

ですので、銀行系カードローンで金利の引き直しを行っても、グレーゾーン金利で貸付していないために過払い金が発生することがありません。

過払い金請求ができるのは、あくまでも消費者金融などの貸金業者から、2010年以前に借りていた場合にのみとなります。

過払い金請求の注意点

過払い金請求は、払い過ぎていた金額が、今も残っている借金を超えることを前提としています。

過払い金請求をしたのはいいが、残っている借金をすべて完済できるだけの金額がなく、その後も借金が残ってしまうこともあります。

この場合、過払い金ではなく、債務整理の1つである「任意整理」となりますので、注意が必要です。

任意整理とは、過払い金請求と同じように、契約当初に遡って利息制限法で定める金利に引き直して再計算し、借金を減額させます。

また、完済までにかかる利息(将来利息)をカットすることもできますので、借入金額によっては数十万円も利息負担を軽くすることができます。

任意整理は銀行系カードローンでも可能

任意整理は、契約通りに借金を返済できなくなった時にする手続きですが、これは銀行系カードローンでも可能です。

しかし、銀行系カードローンを任意整理する場合、過払い金が無いために借金の減額はほぼすることができず、将来利息のカットしか望めません。

また、銀行系カードローンは、ほとんどの場合に預金口座を開設することになりますが、銀行では任意整理の通知を受けると、預金口座を凍結して残高があればカードローンと相殺します。

銀行系カードローンは、大手消費者金融や大手信販会社を保証会社としていますので、任意整理によって代位弁済されると、その消費者金融から借りているものも任意整理となります。

さらに、任意整理は個人信用情報機関におよそ5年間登録されますが、係わった業者では半永久的に情報が残りますので、5年以上たったとしても借りることができなくなります。

過払い金請求は専門家に依頼する

法律事務所がCMをやっているように、過払い金の請求は専門家である弁護士に相談して手続きするようにしましょう。

また、弁護士といっても、それぞれ得意としている分野がありますので、相談は借金問題を得意としている弁護士にするようにしましょう。

先ほどもお話ししましたように、過払い金請求は借金を完済できるだけの金額がなければならず、借金が残ってしまう場合には任意整理となります。

過払い金請求から任意整理へ手続きを移行する場合にも、弁護士に依頼をしていればスムーズに行うことができます。

借金問題を得意としている弁護士は、それまでの豊富な経験から、さまざまなアドバイスもしてくれますので、費用はかかっても最初から弁護士に相談することをおすすめします。

匿名で相談することもできる

借金の問題はなかなか相談しにくい問題です。

ですので、本名で相談することに抵抗がある人もいます。

そのような場合には、インターネットにある「街角相談所-法律-」などのサイトから、匿名で相談することもできます。

また、このようなサイトでは、相談者と最適な弁護士を紹介してくれるものもありますので、どの弁護士が借金の問題を得意としているのかがわからないという人にもおすすめです。

まとめ

銀行系カードローンは、元々利息制限法の範囲内で貸付を行ってきましたので、払い過ぎている部分が無く、過払い金請求をすることができません。

ですが、任意整理であれば銀行系カードローンでも可能ですので、できるだけ早めに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

しかし、銀行系カードローンを任意整理する場合には、注意しなければならないこともありますので、それを認識したうえで手続きするようにしましょう。