借入融資を受けられるかの判断は3つの数字

金融機関から借入を検討している企業は「自分の会社はお金を借りることができるの?」という疑問をよくもつと思います。

何も考えずに、銀行に申し込んでから断られるのは、気分が悪いものです。

そんな時は申し込みを行う前に、自分の会社を自己判断してみましょう。

執筆者の情報
名前:手塚 龍馬(仮名)
年齢:33歳
性別:男性
職歴:2007年~2014年地方銀行の貸付業務に従事

借入判断の目安となる3つの数字

まずは、借入可能かある程度判断することができる3つの項目を紹介します。

それは、

  • 借入金月商倍率
  • 借入依存度
  • キャッシュフロー

の3つです。

では、それぞれの意味と計算方法、どうなっていたら借入できる可能性が高いのかを説明していきましょう。

借入金月商倍率で判断する

借入金月商倍率とは、借入金が月商の何倍あるかを示す数値で、自社の売上規模と比べて現在の借入金に余裕があるのかないのかを示す指標です。

借入金月商倍率=短期借入金+長期借入金+割引手形)÷月平均売上高

借入金月商倍率の目安として一般的な指標は以下の通りです。

小売業・製造業(1.5安全/3.0要注意/6.0危険)
卸売業(0.8安全/1.5要注意/3.0危険)

製造業などは他の業種と比較してどうしても設備投資が大きいため、借入金の規模が大きくなってしまいます。

一方、卸売業などは、借入金月商倍率の目安が製造業などに比べて低くなっています。

いずれにせよ、3.0程度の借入金月商倍率であれば融資は可能であると言われています。

借入依存度で判断する

借入金依存度とは、自社の総資産のうち何%を借入金によって調達しているのかを示す指標です。

計算式は以下の通りです。

借入金依存度=総借入(長期・短期借入金+割引手形残高+社債)÷総資産×100

50~60%までが許容範囲、60%を超えると要注意、70%を超えると危険水域と言われています。

ただし、こちらも設備の借入が大きい業種や設備を導入したばかりの会社は借入金依存度が高まるものであるため、一概に融資が良い悪いとは言えず、一つの目安として利用してください。

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キャッシュフローで判断する

利益が出ていても、現金がマイナスであったら借入金の返済はできません。

そのため、現金がプラスなのかマイナスなのかを示す指標がキャッシュフローです。

キャッシュフロー=税引き前当期純益+減価償却費+売上債権減少額(-売上債権増加額)+仕入債務増加額(-仕入債務減少額)

いくら利益が出ていても、売上債権ばかり増えても現金はプラスにはなりません。

利益だけではなく、実際に現金がプラスになっているのかマイナスになっているのかを示す指標がキャッシュフロー計算書です。

昨今の融資は、上記2つの指標よりも現金がプラスかマイナスなのかを判断するキャッシュフロー計算書を重要視する傾向にあり、キャッシュフローに借入金の返済財源があることが分かれば融資を受けられる可能性はかなり高くなります。

これら3つの指標はあくまでも目安で、銀行はさらに精緻な審査を行いますので、これらの指標だけで融資を受けられるかどうかは決まりません。

貸す側はどこを見ている?銀行の貸付判断基準

銀行は審査の際にどの点注目しているのでしょうか?

決算書から読み取れる財務内容が健全か

営業利益
営業利益とは本業の内容が赤字なのか黒字なのかを示す指標です。

簡単に言えば売上から、売上にかかる経費を差し引いた金額が赤字なのか黒字なのかを示すものです。

一過性の理由で営業利益が赤字である場合には、それほど影響がないのですが、過去2年間も赤字で、これで3期連続の赤字であるような場合には、本業での利益が見込めない会社であると判断されてしまい、審査には通過できない場合も少なくありません。

あくまでも本業にかかる経費しか売上からは差し引かないため、借入金の利息などは加味しません。

借入金が少しくらい過大でも本業で利益さえ出ていれば問題ないため融資に応じてくれる可能性があります。

経常利益
経常利益とは、営業利益から支払利息などの本業とは関係のない費用を差し引いた数値です。

営業利益が黒字なのに、経常利益が赤字の場合には、支払利息が多すぎる場合が多く、借入金が多すぎるということが考えられます。

あまりにも借入金が過多の場合には、融資を断られてしまうこともあります。

役員報酬

通常は会社の経営者の給料に該当するものです。

役員報酬が生活できないくらい少ない場合には、無理やり経費を圧縮して、会社の業況をよく見せようとしていることが窺われます。

このような場合、実際には赤字となっていることも考えられるため、審査の際には役員報酬が生活していける金額に足るかどうかをチェックしています。

減価償却費

減価償却が適正になされているかをチェックしています。

減価償却とは建物や機械などの価値を目減りさせるための費用です。

建物や機械などは額面金額から残存価格を差し引いて、償却期間で按分するものです。

例えば額面金額の120万円の自動車が残存価格10%で耐用年数5年あるとすると、(120万円-12万円)÷5年=216,000円を1年ごとに費用計上して、販売費および一般管理費に計上しなればなりません。

役員報酬と同じように、利益が出ていると偽装するために、減価償却費を少なく計上する例があるため、銀行は審査の際に減価償却が適正に行われているかどうかをチェックします。

売掛金

売掛金が真正の売掛金か、不良債権でないかどうかを、決算書に付属の内訳明細などをチェックしています。

売掛金とは一般的には数ケ月で資金化される売上債権ですが、毎年毎年同じ取引先が同じだけの金額を売掛金として計上している場合があります。

このような債権は通常は不良債権と見做されます。

不良債権として費用計上して、会社の実際の財務状態に引き直すという作業が銀行審査において行われる場合があります。

貸付金

売掛金と同じように、毎年の決算書の中で同じ先に同じ金額だけ貸付金がある場合には、このような貸付金は不良債権として処理しなおされてしまう場合があります。

銀行審査において、売掛金や貸付金のような勘定科目はその中身を精査して、より実態に近い財務状態を明らかにします。

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融資希望額が妥当か

融資の申し込みの際に「いくら必要なのか」ということは、自社が単純に貸してほしい金額を示してもその通りに借りることができるわけではありません。

運転資金であれば適正な運転資金はいくらなのかを銀行で計算して、適正であると認められる金額までしか借りることはできません。

また、設備資金を借りるのであれば、それだけの設備を導入して利益が上がるのか、また、返済は可能かを銀行で判断し、設備の見積もり通りの金額までしか借りることはできません。

運転資金とは、1ヶ月分売上金の入金期間×1ヶ月に必要な経費で計算することができます。

月商100万円の会社で入金が3ヵ月後で、1ヶ月の経費が70万円の場合には、70万円×3ヶ月=210万円の運転資金が必要になると計算できます。

融資金額は凡その希望金額を決めて銀行に話をすれば、銀行はいくらくらいが自社の決算内容から見て適正な金額なのかを判断してくれます。

まずは、気兼ねなく相談してみましょう。

ただし、銀行は必要もない金額まで貸し付けてこようとする場合がありますので、できることなら、自社の必要運転資金がいくらなのかを自分で計算してから申し込みに行くようにしましょう。

ただし、新規融資の際には信用保証協会の保証付きの融資が大多数です。

自社や銀行がいくら借りたいと言ったところで、信用保証協会が「いくらまでしか保証しない」と言えばそれまでです。

銀行もいくらなら貸すことができるとは、最初の相談の段階では確定的なことは言うことはできないため、まずは銀行と相談してみることをおすすめします。

よほど法外な金額を申込時に希望しない限りは金額が多すぎるというだけで審査に断られることはないので安心しましょう。

調達資金の使途

借りたお金を何に使用するのかを明確化しなければなりませんが、会社の借入の際には運転資金か設備資金しかありません。

運転資金であれば前述したように、経常運転資金として必要であると認められる必要があります。

また、設備資金の場合には、その設備を導入したことによって、どの程度の売上の向上を見込んでいるのかが重要になります。

バブル期によく見られたような、必要もないような工場設備を銀行があっせんし、銀行が当該物件を購入するための資金を融資するという手法で、多くの企業が破たんしたという事例がありました。

このため、企業に設備資金を融資するのであれば、その設備によってどの程度の利益が見込めるか、売上計画に合理性がない場合には審査には通過できないこともあります。

返済の見通し

返済計画は資金繰り表によって行う必要があります。

資金繰り表とは、会社の資金繰りを示したものです。

借入を行うと、当然ながら返済金の負担が毎月生じます。

この際に、毎月しっかりと返済していけるかどうかを表にします。

売上はいくらか、売掛金の入金がいくらか、経費はいくらか、返済金負担はいくらかを表にして、その金額がプラスになっていないと融資を行うことはできません。

この際に、売上が向上する見込みを立ててもよいのですが、売上が向上するのであれば、売上が向上する根拠も併せて示さなければなりません。

担保や保証人

新規の融資の際は信用保証協会付の融資が基本です。

運転資金を借りる場合には担保はありません。

法人の場合には代表者が保証人となることが一般的です。

この際に、代表者の個人資産を証明する資産証明書や預金通帳の開示を稀に求められることがありますが、開示を求められることはめったにありません。

設備資金を借りて、当該設備が建物や土地の場合には、その建物や土地を担保として提供しなければなりません。

担保や保証人を提供して資金を借りるという方法はひと昔前の融資方法で、今はこのような融資を行っている銀行はほとんどありません。

特に銀行にとって信用力のない新規の取引先の場合にはなおさらです。

担保や保証人をつけて信用保証協会をつけない銀行のプロパー融資は銀行にとってよほど信用力の高い先や、倒産したら銀行にとっても損失が大きい大口の融資先にしか行いませんので、中小企業が新規で融資を受けるような場合には担
保や保証人のことはほとんど気にする必要はありません。

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妥当な融資金額を決定するポイント

運転資金を決定するポイントは上記に述べたように、適正な経常運転資金としてみなされるかどうかです。

また、設備資金であれば適正な設備と認められれば、見積もり金額までの融資を受けることが可能です。

その他にも融資金額の決定に影響を及ぼす指標は以下の通りです。

借入金月商倍率で決定する

業種にも因りますが、借入金月商倍率は0.8~1.5倍が安全(融資がおりやすい)な金額とされています。

例えば月商が100万円の場合には

借入金÷100万円=1.5

という計算になりますので、66.6万円以内であれば融資を受けやすいと言われています。

上記に示した業種ごとの指標に合わせて、自社の借入金月商倍率でまだ借入に余裕があるかどうかを試算してみてはいかがでしょう。

年間返済額で決定する

会社のキャッシュフローが年間返済額を上回っていることが必要で、キャッシュフローは審査の際に重要な判断材料になります。

自社のキャッシュフローが融資の返済金に足りないと、「償還財源がない」と判断されてしまい、融資を断られてしまう場合もあります。

このため、自社のキャッシュフリー計算書から算出されるキャッシュフローが年間返済額に足りているかどうか比較して、足りていない場合には、翌期の販売計画を見直すか、返済期間を延ばしてキャッシュフロー内に返済額が収まるようにする必要があります。

キャッシュフローが100万円の会社であれば期間5年で借りれば500万円程度までの借入をする財務的な余裕があると見做されます。

支払利息で決定する

売上高に対して、利息をいくら払っているか。売上高の1%以下が目安になります。不動産業は資金を長く寝かせるので、支払利息の割合は3%程度が目安になります。

利息の低い融資を借りれば支払利息は自然と下がっていきますし、利子補給などがある地方自治体の制度資金なども利息の負担を軽減できます。

このため、支払利息で借入額の適正度合いを測る方法を銀行は一般的には行っていません。

ただし、営業利益で黒字であるのに、支払利息が多く経常利益で赤字になるような場合には、明らかに借入過多となってしまうため、このような場合には、経常利益を圧迫しない程度の借入金に収まるように判断される可能性もあります。

売上高が1億円の会社であれば1%の支払利息は100万円となります。

借入が何もない場合には、100万円の利息負担までは耐えられるという考えになり、金利が2%の場合には1年返済の借入を5,000万円の借入まで可能という考えになり、明らかに多い金額です。

このため、支払利息だけで融資金額を決定する方法はほとんど採用されません。

借入依存度で決定する

短期借入金と長期借入金、割引手形の合計額を負債と資本を合計した金額(総資本)で割る50%以下になることが目安とされることが多くあります。

ただし、中小企業は借入金依存度が50%を超えているような場合も決して珍しくありません。

また、設備資金などをフルローンで借りた場合にも自然と借入金依存度は上がっていきます。

借入金依存度はそれほど審査の過程では融資金額に影響を及ぼすわけではありませんが、できる限り借入金依存度が少ないこと、償還財源がしっかりとあること、など他の指標と総合的に判断して借入額の決定がなされる場合が多くあります。

総資産が1億円の会社であれば5,000万円程度まで借りることが可能です。

設備や借入金の状況によりますが、資産の半分くらいは借入金で調達しているというのが多くの会社では珍しくはないため、借入金依存度から自社の借入金の余裕はどのくらいあるかの参考にしましょう。

ただし、借入金額を決定するのは、あくまでも必要運転資金かどうか、設備が適正かどうかです。

上記4つの指標はあくまでも審査材料として採用されるかどうかすら分からない1つの基準にすぎませんので、参考程度にしてください。

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